美容室業界レポート
美容室業界レポート
<レポートの概要>
激しい過当競争となっている昨今の美容室業界で、どのように生き残っていくのか、各種マーケティング調査資料を駆使し、今後の展開の方向性を探ります。
1.美容室の競争は、どれほど限界に来ているのか。
・市場規模は?生き残れる美容室は?
・全国の美容業市場は約3倍の飽和状態
・間違えてはいけない!美容業は接客業
2.23区別、成功しやすい立地はここだ!
・インターネット上で検索できる全ての美容室をチェック。
・人口の割に出店数が少ないエリアはどこ?
3.東京の美容室チェーン店のライバル関係は?
・大きなチェーン企業はどこ。
・中堅企業で、5店舗以上経営しているサロンはどこ。
4.タイプづけ
・今の美容室利用実態(顧客による多様化。ランダムに取った街頭アンケート結果の発表)
・美容室にはどのようなタイプの店があるのか。
・どのようなタイプが生き残ることが出来るのか。
・受けるメニュー構成は?
・計画停電で分かった固定客の大切さ
5.これからの美容室事情
・今後の美容室はこうであるべき!?
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1.美容室の競争はどれほど限界に来ているのか。
・市場規模は?生き残れる美容室は?
美容業は約1.46兆円、理容業と合わせると2兆円以上の規模となり、サービス業の中でも大きな市場規模がある業界です。地域的な特徴については、東京都は他の大都市に比べて約5倍~10倍といった非常に大きな規模があります。府中市、調布市など東京都の23区以外の地域だけでも、 約710億円ものとなり、大阪市などの政令指定都市を上回る市場規模があることがわかります。このような優良な市場に対して、概ね同じような市場規模の飲食業等に比べて比較的設備投資を要さないため、参入障壁は比較的低い業界であると考えられます。
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・全国の美容業市場は約3倍の飽和状態
全国の美容師数は、H21年までの10年間で約1.3倍になっています。また、美容室は約1.1倍になっています。平成17年以降、その増加数の勢いは弱くなってきていますが、新規開店率は常に廃業率を上回り、競合店が参入し続けている状況には変わりません。
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平成21年には、9,779店鋪が開店し、7,527店鋪が廃業しました。21年の美容室数が221,394店鋪であるので、現状の約3.4%が廃業したことになります。100軒美容室があれば3~4件は廃業する状況です。一方、この数字は届出ベースです。自宅で開業している美容室の場合は、ほとんど営業をしていなくても廃業届を出さない場合があると考えられます。
実際のところ、約22万軒のうち、どれくらいがまともに稼働している状況でしょうか?ここで試算をしてみます。
まず、平成21年の経済センサスによると、全国の美容業の事業所数は、176,157件数です。221,394店鋪のうち、約79.6%が1企業、すなわち約8割が1企業1店舗であることが分かります。従業員数は482,191人です。美容師数が453,371人であるので、28,820人(約6.0%)が美容師ではない従業員がいることも分かります。
次に消費について調べます。22年度の家計調査年報によりますと、1世帯あたりの美容室関連の消費金額は、年間24,832円です。これは、カット、パーマ、その他の美容サービスという項目を合計した金額です。エステなども入っていますが、店販部分の金額が入っていないので、代わりに、これを美容室での支出金額と「仮定」します。
23年現在の全国の世帯数は、51,951,513世帯なので、これを掛け合わせると、129,005,9970,816円です。約1兆3,000億円ですので、前述の市場規模の説明(約1.46兆円)とほぼ同等の数字となり、大きく間違えていないことが分かります。
全国で約1兆3,000億円の売上高が上がっていますが、これを店鋪数223,645店鋪で割ると、5,768,338円となり、1店鋪の平均売上高は年間約580万円という低い数字になってしまいます。上記の数字によると1店舗あたり約2名の美容師がいる計算になるので、二人で年間580万円の売上高は低すぎる売上高です。自宅で、夫婦で営業といっても実際には厳しいと考えられます。存続を考えるには少なすぎる数字です。
では、実際に健全に営業出来ているサロンはどれほどあるのでしょうか。売上高に占めるお給料の割合から、実際に稼働している店鋪数の予測をしてみます。
当方のコンサルティング経験からすると、一般的に従業員の給与は売上高の約35%程度のお店が多いです。全国の美容室に勤める従業員の給与の合計(試算)は、約1兆3,000億円の35%であるので、4,550億円となります。従業員数が482,191人ですので、一人当たりのお給料は年間約94万円!ということになってしまいます。かなり少ない金額です。
賃金センサスや民間の調査資料によりますと、美容師1名あたりの1ヶ月の給与(総支給額)の平均は、約23万円、年収にして約280万円です。全体で一人あたり年間94万円しか支払う能力がない経営環境において、実際には280万円の支払いが起きている、すなわち約3倍は支払われているので、稼働している店鋪は約1/3ということになります。約22万軒ある美容室のうち、きちっと利益を出しているのは、約7.3万店鋪と想定されます。
店舗の数は需要の約3倍であり、本当に厳しい市場環境にあると言えます。競争は限界に達していると言わざるを得ない数字です。
一方、実際のところ、地域によって差異があることも肌感覚で分かります。人口が過疎化しているエリアでは明らかに美容室が飽和状態となっています。かつて、埼玉県北部の某美容室で商圏内の競合店の観察調査をしたところ、稼働して競合と呼ばれる店舗は10店舗で、そのほか、インターネットの電話帳に載っているが、営業していないと思われる店舗、または、お客様が来た時だけ開店するような店舗が37店舗もありました。
出店の勢いは少し緩みましたが、店舗が増加する傾向は変わりません。これから出店するサロンは、まさしく勝ち残りをかけて出店するのです。
同時に、「出店場所」の的確さが成功の条件であることは言うまでもありません。大きく都道府県別に出店状況を見ると下記の様になります。(平成17年度)

都道府県別に見て、1事業所あたりの人口が最も多い県は、神奈川県であり、唯一、1事業所あたりの人口が1,000人を超えます。首都圏では、神奈川県はまだ出店余地があるということです。次いで奈良県が2位です。人口は青森県と近い水準の140万人を少し超えたくらいですが、美容室事業所数が約1,200も少ないので2位となりました。滋賀県も同様の傾向を示し3位となっています。実際は、大阪や京都の美容室に吸引されていることも考えられますが、他の県に比べると比較的競合関係が緩い県と言えます。
全国の平均が722人ですので、上位11位までが平均に比べて1事業所あたりの人口が多い県となります。その他の県は飽和度が高い県と言えるでしょう。
首都圏では、神奈川の他、千葉・埼玉が単純に出店に適している県であると言えます。ちなみに東京都23区部の美容業事業所数(22年度)は、10,271事業所です。23区の人口(22年度)は、8,949,863人であるので、1事業所あたり人口は約871人になります。東京都全体で853人なので、区部の方が、少しだけ出店余地がありそうです。
人口と事業所数だけ見た場合は、以上のような考察ができます。
・間違えてはいけない!美容業は接客業
美容業は、小売業や飲食業など他の業種に比べて、サービス対象である顧客と近距離で接する時間が長いことが特徴です。
<平均的な接客時間>
●美容:カット約30分 ~ 、パーマ・カラー:約1~2時間
●マッサージ・エステ:約30分 ~ 1時間
●飲食:約5分 ~ 10分
このように顧客との接触時間が長いがゆえに、施術技術とともに、個々の美容師(スタイリスト)の接客能力(コミュニケーション能力)が来店に大きな影響を及ぼすと考えられます。同時に店舗イメージが重要視されており、店舗の物的デザイン(空間や空気感・雰囲気)も来客数に大きな影響を及ぼします。
単なるサービス業と捉えると、3倍の飽和状態かも知れません。複数の美的要素が加わることにより、客単価が高まり、市場が膨らんだりするのも、この業界の特徴であるといえます。
現在は、技術力・商品力・空間力の上に、近年は「セラピー」要素が加わっています。この部分がないと単なるサービスに終わってしまい、飽和状態=価格競争の消耗戦に加わることとなります。
「セラピー」要素の付加とは「健康的・精神的充足」を享受することです。90年代のバブル崩壊、21世紀に入ってのITバブル崩壊、世界同時多発テロ、リーマンショックなど、この20年間は過去に考えられなかった大きな危機が実現となりました。これらが原因による景気の減退、所得の減少、雇用機会の減少は人々に大きな「不安と心配」を与えました。それまでの横一線の消費行動はなくなり、自分たちの実力・収入に合わせた消費、失敗しない消費に焦点が当たることとなりました。現在では、東北地方に起きた東日本大震災、タイの大洪水など、未曾有の天変地異も起き、人々の不安感は益々増長しています。アメリカやヨーロッパの国々の国債の価値が下がってきていることも大きく気になります。
現在、美容業を利用するお客様も、失敗したくないニーズは強いものがあります。多くの消費者はネットで比較し、失敗しない情報を集めて店舗に行きます。この、情報収集の段階で重要となってくるキーワードが「精神的な癒やし」と「自己啓発的な言葉」であると考えられます。毎日、不安な日々を過ごす人たちにとって、日常生活で癒される場が必要です。また、自己の責任が問われ、自分の力で世の中を渡っていかなければならないと勉強に励む人が増えているように、自分自身を高める、変化できる場所も必要です。この2点を同時に充足させることができるのが「美容室」であると考えられます。
ヘッドスパ、マッサージなどのリラクゼーションメニューが充実し、精神的な癒しを充足できると共に、パーソナルカラーなどのサービスを受けたり、「婚活」のヘアスタイルを研究したりと、どんな風に着飾れば自分が活かせるのかなどの「自分みがき」も勉強できる業態へと変貌してきています。
2.23区別、成功しやすい立地はここだ
・インターネット上で検索できる全ての美容室をチェック。
前述の美容業市場の考察から、東京都内、特に23区部の市場の重要性が確認できました。そこで、23区内には、どのような美容室があるのか、網羅的に調査することにしました。
株式会社匠技研の多大なる協力を得て、「ホットペッパービューティ」「ビューティナビ」「髪まど」、その他、インターネット電話帳、地域の美容室ポータルサイトなど、インターネット上で検索できる23区すべての美容室をリスト化しました。また、DMを発送したり、直接電話をかけたりし、存在しないサロンを削除しながら店の存在も確かめています。
最低限の情報として、美容室名、郵便番号、住所、電話番号、店舗の種類(ホームページやグーグルの店頭の写真から判断して、昔からあるおばちゃんサロン、ファミリーサロン、トレンド系サロンなど)を入手し、さらには、URL、店長の名前、カット料金などの付加情報も加えていきました。

これらの調査によりますと、ネット上で確認できた23区内の美容室数は、8,664店舗でした。事業所統計によると東京都23区部の美容業事業所数(22年度)は、10,271事業所です。全てが1店舗ではないのですが、約8割のサロンをカバー出来ています。
それらの内訳は以下のようです。人口とも比較し美容室の密度も示しています。
もっとも美容室が多い区は「渋谷区」(927店舗)であり、次いで「世田谷区」(830店舗)、 「大田区」(538店舗)となりました。4番目は「港区」(508店舗)と「江戸川区」(508店舗)が同数であり、6番目は「練馬区」(468店舗)でした。
一方、人口に対する美容室の密度では、「渋谷区」がダントツの1位で、次いで「港区」「中央区」「千代田区」「豊島区」の順になります。
人口の割に、渋谷区、港区は有名店などもあり、美容室が密集していることでも理解できますが、中央区や千代田区など、美容室が少ない区でも人口が少ないので密度は高まります。特に中央区には、「銀座」があり、多くの美容室が出店しています。
商業エリアで、意外と密集度が低いのが「新宿区」です。世界最大の交通の接結点で、かつ、小売の販売額も大きい新宿区ですが、美容室の密度となると、23区の平均値(人口÷店舗数:985.9店)と大きく離れていません。(新宿区の美容室密度は、881.4店)
渋谷区や港区のように「新宿区にわざわざ美容室に行く」という、おしゃれなイメージは少ないかもしれませんが、圧倒的な昼間人口がありますので、意外と見過ごされている地域かも知れません。
・人口がある割に出店数が少ないエリアはどこ?
さらに細かく出店に適した地域を探っていきたいと思います。インターネットで探すことが出来る23区すべての美容室の中で、住宅地で美容室の店舗数が多い「江戸川区」「杉並区」、美容業のメッカ「港区」、池袋があり美容ニーズも強いと思われる「豊島区」の4エリアに絞って、考察していきたいと思います。
ここでは、店舗の出店地を㈱匠技研のタクミマップを使って、地図上にプロットします。そして、その背景に、ターゲットが沢山住んでいるか分かる加工をしたいと思います。
仮に、今回のターゲットを25歳~34歳の女性とします。その女性達が沢山すんでいるところが濃くなるように、メッシュ(500m四方で囲まれた範囲)をかぶせて、ニーズのあるところに店舗があるかどうかを調べました。これらの年代をターゲットにするならば、以下のポイントに出店したほうが、その利便性から売上高が確保しやすいと言えます。
(1) 江戸川区

江戸川区内の出店集中エリアは、JR平井駅周辺、都営線東大島駅周辺です。一方、内部の住宅地エリアにも散らばって美容室が沢山あることが分かります。また、西北から東南にかけて走る道に美容室が点在しています。
これらを避けたエリアでターゲット人口密度が高いエリアがあります。2番目まで濃いメッシュの中で、2店舗以下の出店地は(a~f)の6箇所あります。
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