数値で見る外部環境変化
1)数値で見る外部環境変化
(1)人口減少とサロン数の増加
平成17年より人口が減少する時代となりました。これまでの日本の歴史上、自然減で人口が減少することはなく、市場経済にこれまでにない大きな変化をもたらすと予測されています。減少の原因は、女性の社会進出などによる「出産」に対するライフスタイルの意識変化と、バブル経済崩壊後の景気低迷が掛け合わさった結果、合計特殊出生率の大幅となったことが挙げられます。今後、大きな環境変化がない限りこの傾向は続くと考えられ、確実に人口が減少していくことを考慮したサロン経営が求められます。
図1 出生者数・合計特殊出生率の変化
一方、大手チェーンの大量出店、熟達したスタイリストの独立などにより、美容室数は増加傾向にあります。
1店舗あたりの客数は、急激に減少していく、大競争時代となっております。
これまでのように、毎月、確実に前年度対比100%売上高を獲得できる保証はなく、より一層の努力が求められます。スタッフの技術力のみならず、サービスに力を入れる、顧客管理を徹底させる、付加サービスを増加させるなど、店舗の総合力が問われる時代となっています。
図2 競合激化
(2)スタッフ確保の困難性
労働生産性の強い美容業界では、売上高を挙げるためには、美容師の確保は必須条件です。
平成11年前後のカリスマ美容師ブーム、平成12年の木村拓哉主演「ビューティフルライフ」などの影響で、美容師の年間新取得者は、それまでの17,000人台から一機に1万人増加し27,000人台となりました。さらに「手に職」意識が高まったバブル経済崩壊を背景に確実に増加しておりました。しかし、ここにきて少子化の影響が出始め、美容学校卒業生の減少と労働条件の厳しさにより、美容師数の伸びに陰りが出てきています。ここ2年間、年間新取得者数は前年実績に対して約1,800名の減少となりました。
少なくなった卒業生が、美容師志望とは限らなくなり、新卒生の争奪戦が繰り広げられる状況となり、結果的に、福利厚生や店舗イメージが確立しているサロンに人材が集中し、さらなる出店を可能としているのに対し、小規模のサロンには人材が集まらないという二極化現象が見られる状況となっています。
小規模のサロンはこれまでとは異なった人材戦略を取る必要があり、サロン外の人的ネットワーク拡張の重要性が増しています。
図3 美容室・美容師数の推移
出典:株式会社しろさか WEBサイトより
(3)美容市場の推移
一方、人口減少と堅実な生活を営む消費者が増加した結果、苦戦を強いられているのは、美容業だけではなく、他の業界も同様です。データで市場の推移を見る限りでは、美容業は決して不況産業ではありません。
毎年発表される家計調査年報を分析すると、消費生活に直接必要な業界で、支出金額を増加させているのは、「医療業界」ぐらいであり、日本の基幹産業である自動車関連消費や、衣料品などは減少しております。こういった厳しい状況の中、美容に関する支出は、横ばい状態です。店舗間の競合は激しいですが、市場全体から見ると非常に堅実な市場であることが分かります。
自店の既存顧客を維持し、他店と差別化が実現できれば、新規顧客を増やすことが充分可能であることが改めて確認できます。
図4 代表的な出費の推移
図5 美容に費やす金額
※カットなど一般的施術は横ばい。エステなど他の理美容代が増加
◆今後、市場は堅調であるものの、競合がますます激しくなるものと考えられます。一方、自店の特徴を的確に捉え、強みを強化して差別化を実現できれば、売上高の増大は他業界に比べて容易です。
◆何を差別化するのかを明確にする作業がサロンコンセプトメイキングです。
◆数種類のマーケティングリサーチを駆使し、自店のサロンコンセプトを明確にしましょう。