一年以内の行動(短期戦術)
8)短期戦術
短期戦術とは、基本戦略で計画化された数値目標を達成するために、1年毎に設定される戦術のことです。一年間の目標売上高は、「必達」です。これが達成されないと、長期的な計画(基本戦略)が狂ってしまい、計画を立てた意味がありません。この目標売上高を必ず実現するために、売上高を個人の段階までブレークダウンした、個人目標の設定は必要条件となります。個人目標を達成できてこそ全体目標が達成できます。個人目標は全体目標達成のための個人の責任分担ですが、一方、どの部分の責任を達成するのかは、全体目標が詳細に設定されていないと達成できません。それを詳細化するために、マーケティング・ミックスを構築します。
マーケティング・ミックスとは、サロンが目標達成のために行う4要素(4P)、すなわち、商品(Product)、価格(Price)、流通チャネル・立地(Place)、販売促進(Promotion)を組み合わせることを意味します。
(1)商品
1.商品(サービス)の特性
美容業はサービス業のため、サービス商品の特性を押さなければなりません。サービスの特性は、無形性(サービスを受けるまで内容がわからない)、変動性(サービスの質にバラツキがある)、消滅性(在庫しておけない)にあります。
<無形性>=顧客の不安です。ここが消費者にとって最も心配になるところです。サービス前のカウンセリングと、施術が終わるまでに、顧客に途中経過を確認してもらうタイミングが絶対的に必要となります。これを疎かにすれば確実に失客となります。
<変動性>=個人の技術レベルに依存されるということです。個人に依存されすぎると、店舗としての統一性がなくなり、顧客の不安につながります。誰が担当してもレベルの差がなくなるように、日ごろのコミュニケーションと練習、技術の伝承は不可欠となります。
<消滅性>=繁閑の差が必ず発生まれます。サービスは在庫できないので、必ず休日は忙しく、平日は暇になります。なるべく平日に来ていただく働きかけ(販売促進)は、必ず行うべきであると考えられます。
2.メニューミックス
サロンが提供するメニューの組み合わせをメニューミックスといいますが、どんなサービスをどんな「幅」と「深さ」で品揃えするのかを考えることは重要です。
「幅」は、「シャンプー」「カット」「カラー」「パーマ」「トリートメント」という基本的な施術から、「ネイル」「エステ」などの副次的なものまでを指します。
「深さ」とは、たとえば「カットテクニック」の多さや、「カラー」の種類が豊富、「パーマ」技術のバリエーションが多いなどを指します。
最近では、客単価アップと差別化を目指し、トータルビューティ化し、「幅」が増える傾向にありますが、「幅」が増えすぎ「深さ」がなくなり、かえって、独自性が出しづらくなっているサロンも多く見受けられます。メニューミックスは、「お客様のニーズ」と「競合店の取り組み」と、「自店舗のキャパシティと店舗イメージ(ブランド)」を考慮して、ベストなミックスを構築する必要があります。
また、メニューは、お客様を呼ぶメニュー(客数メニュー)と、利益を稼ぐメニュー(利益メニュー)を意識的に分けて提供しなければなりません。一般的にお客様を呼ぶメニューは「カット」のディスカウントで、利益を稼ぐメニューは「カラー」や「パーマ」という場合が多いですが、競合状況によって、客数メニューと利益メニューは異なることになります。要は交差主義比率が最も高くなるポイントをトライ&エラーを繰り返すことにより、探し当てることです。
(2) 価格
価格の設定は、「競争志向」の価格設定と「コスト志向」の価格設定に分けることが出来ますが、基本的にはサロンの損益分岐点を考慮した粗利益率を稼ぐことが出来る「コスト志向」で設定されます。
一方、競合の激しいエリア内に立地している場合は、価格を引き下げてお客様を呼び込むことも視野に入れる必要がありますので、一部のサービスで「競争志向」の価格設定が行われます。
今後、人口の減少と出店の増加により、競合が激しくなると予測されますので、消費者の心理をつかんだ「競争志向」の価格設定は必要となると予測されますが、一方で参入障壁の高い、利益の取れるサービスを開発し、交差主義比率(回転率×粗利益率)を上げていくことが重要となります。
ここで心配されるのが値下げ競争の結果、利益が圧迫されないかということですが、極端なディスカウントは避けるべきであると考えられます。そこでは競合店の見せかけのディスカウントに振り回されないことが重要となってきます。
現在の美容業市場では、2種類の見せかけのディスカウントが見受けられます。一つは、カット10分間1,000円を謳うディスカウントです。これは企業努力とアイデアによって実現された素晴らしい価格体系ですが、10分間1,000円ですので、一般の施術時間(約60分)に置き換えると、6,000円ということになります。従って実質的にはディスカウントではありません。「髪が短くなり、かつ払う金額が少ない」ので消費者のメリットは大きいですが、ヘアスタイルにこだわりの有る消費者には、必ず不満の残るサービスになります。もう一つは、メニュー表では安く提示してありますが、施術が終わると「指名料」などが加算される価格体系です。
店舗ロイヤリティの低い消費者は価格に対して敏感ですので、安いイメージのあるサロンに関心を示し行動を起こします。(一般的に消費者の約8割はそういう動きをします)一方、最終的には、サービス自体に満足感があるかどうかということになり、実質的に値ごろ感がないと再度消費者は離れていきます。
また、美容業はサービス業であるので、価格の低下には限度があります。価格を下げるということは、客数を取りに行くということですが、昨今の競合店舗の激増と人口減少のような状況では、価格を下げた分の客数維持は困難であると思われます。また、客数をこなそうと思えばスタッフもその分必要となり、必要スタッフへの給与配分が増加します。それを抑えようとすれば、スタッフのモチベーションの低下となり優れたチームワークを維持することができません。(現状の給与水準からの低下は考えられない) さらに、新しく新入社員を募集する際に基本給の提示を行いますが、これも新人獲得競争上、下げることはできません。従って、スタッフ全体への給与配分を考えると、価格の低下にはリミッターが機能し、いいところに落ち着くこととなります。
ですから、価格低下に対してはあまり過敏とならず、サービス本位で日々精進することが望ましいです。
どのようなお客様を獲得するのか、それを考慮し、価格体系とサービス水準を決めることが重要です。
(3) 立地選定
【有料となります。お問い合わせフォームにてご連絡いただければと思います。】
(4) 販売促進
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