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ミッショナリー・マーケティング

2010-01-12-火曜日 8:21:26

消費者が望むサロンの業態とは

一、非常に厳しい日本の経済状況

日本経済は、2008年秋のリーマン・ショック以降、急速な悪化を続けてきた。経済成長率を見ると、2009年1月~3月ではマイナス3.1%であり、不況のどん底を経験した。ここ最近は、4月~6月がプラス0.7%、7月~9月がプラス0.3%と最悪期は脱した模様であるが、末端の消費者までは回復の様子は全く感じられない。それは、雇用関係が少しも改善していないからである。

景況最悪時の今年1月~3月の完全失業率は、4.4%であったが、直近の7月~9月では、5.5%となっている。雇用情勢はさらに悪化しているのである。

景気は、アジア向け輸出の伸びや公共投資の増加、エコポイント制度、エコカー減税などによる個人消費の復調などで、危機は乗り切ったようであるが、「緊急経済対策」の息切れで、景気の底割れが大きく懸念されている。毎年、12月に入ると、来年度の概算要求の様子がつかめ、どのような対策が打たれるかなんとなくは分かり、それだけでも少々の期待感は出るが、今年は民主党を中心とした連立与党に政権が移り、全く先が読めない不安な状況が続いている。

基本的に、製造業関連の設備投資意欲が相当鈍化しており(12月の日銀短観では過去最大の28%減)、また、雇用悪化による個人消費が相当に冷え込んだままであるので、輸出が調子を取り戻したとしても、国内産業の急速な回復は、殆ど期待できない状況である。夏には、参議院選挙が行われるので、民主党も票取りのための大きな経済対策をする可能性もあるが、現状では経済が自力で回復するための具体的なコマが見あたらない。当分の間は、アジアへの輸出に頼った不安定なものになると思われる。

2010年は、これまで以上に、自社の創意工夫で新たな消費者ニーズを駆り立てて、売上を作っていく努力が必要となってくる。受注(お客様)を待っているだけでは仕事は来ない。

 

二、理美容業の現状

一方、美容業界に目を向けると、市場規模自体は、他の業界に比べて多少落ち込みは少ない。

家計調査年報を見ると、大項目中で殆どの項目が数字を減少させている。金額が増加しているのは、「保健医療」「交通・通信」「諸雑費」のみである。「保健医療」の分野では、「診療代」やサプリメントなどの金額が伸びている。「交通・通信」では「移動電話通信料」が2倍以上に金額が増加している。「諸雑費」では、「理美容用品」と「葬儀関係費」が大きく増加している。

主力業務としての「理美容サービス」は4.7%ほどの減少であるが、シャンプー、化粧水などの「理美容用品」の消費金額は増加している。店販での売上増のチャンスはどのサロンにも等しく残されている。

これらの事から、この不況の中でも「健康と美容」に関しては、強い需要があり、各サロンは自信を持って、サービスと商品を薦めていくべきである。

三、技術革新

では、具体的にどのように薦めて行けば良いのであろう。

停滞している市場に新しい風を吹き込むには、イノベーション(革新)が欠かせない。そこで、イノベーションについて少し復習するが、イノベーションと言えば、シュンペーターである。シュンペーターは、「イノベーションとは、経済活動の中で、生産手段や資源やそして労働などを今までとは異なる仕方で新結合すること」とし、具体的な類型として、5つの革新を定義している。①新しい生産物または生産物の新しい品質の創出と実現②新しい生産方法の導入③新しい販売市場の創出④新しい供給元の開拓⑤産業の新しい組織の創出、である。

理美容業界では、QBハウスさんの躍進がイノベーションとして取り上げられることが多い。②の「新しい生産方法の導入」において、「水」を使用しないという工程の革新(プロセスイノベーション)を実現し、市場占有率を向上させた。

今後も消費者のニーズが変化していくのは当然である。次のイノベーションは読者の皆さまが実現しなければならない。

 

四、消費行動の源泉

70年台以前は、松下幸之助氏が提唱した水道理論が代表的な例で、需要が供給を上回る「必然的消費」であった。80年台~90年台では、品質は同様なものであるが、多くのブランドが乱立し、マス広告によって売上高が左右された「選択的消費」の時代であった。需要と供給のバランスが取れており、消費者はメーカーが供給した商品を、広告を信じて自分の価値観に合うものを選択して購入した時代である。

二〇〇〇年台に入ると、供給が完全に重要を上回り、消費者はメーカーのマス広告にほとんど踊らなくなる。特に二〇〇一年の世界同時多発テロ、二〇〇二年のITバブル崩壊以降、消費行動の慎重さは、想像以上のものである。この時期から、勝ち組と負け組が明確にわかれるようになる。

勝ち組に共通していることは、消費者の「精神的な部分」を支援していることである。消費者の精神的な部分を如何に満たし、「自分みがき」を支援しているかで、業績に大きな違いが出ている。

また、多くの経済的苦難に合った結果、信じることのできるのは自分だけであり、自分の判断価値を最優先させるようになった。その判断の情報源になっているのが、最近ではインターネットによる検索情報である。インターネットで生?の情報を共有し、結合させることによって自分の行動を創造化させている。「創造的消費」の時代となった。

余談になるが、私が支援させて頂いているサロンでは、今年に入り、新規顧客の来店動機の最も多い項目がインターネットとなっているところが増えた。ポスティングや紹介キャンペーンも行っているが、労力の割にはリターンがさらに少ない状況となった。

 

五、余暇の過ごし方

2008年のレジャー白書((財)日本生産性本部発表)によると、「余暇時間」が増えたとする人は、バブル崩壊を経た平成4年以降長期的な減少が続いている(平成4年24.8%→平成20年17.3%)。「余暇支出」も減少している。(減ったと答えた比率・平成4年18.6%→平成20年30.7%)。主に「海外旅行」「ゴルフ(コース)」「中央競馬」など無駄な出費を抑える傾向がある。反対にお金をかけても大切にしたいものとしては、1位・家族と楽しく過ごせる、2位・友人や仲間と楽しく過ごせる、3位・健康の維持・向上にかかわる、4位・興味のあることに知識や能力を高める、5位・身体や心が癒される、などが挙がっている。10位には、美容やファッションにかかわる、が入っている。不況下のレジャー・マインドは、完全に「イエナカ・イエチカ消費」を中心としている。一方、注目されるのは、4位に「興味あることに知識や能力を高める」が入っている点である。広い意味での自己投資(自分みがき)や、知的好奇心を満たす楽しみとしての学びへの関心が高まっている。最近の女性が歴史的人物に興味を持ち始めた「歴女」ブームもこの一環であると考えられる。

 

六、ミッショナリー・マーケティング

ここまで市場が細分化されると、一般的な最大公約数のお客様を集めて、企業の利潤だけを追い求める戦略では、限界があることが分かる。

もちろん企業は利潤追求が必要であるが、それ以前に、経営陣は利潤を最優先に考えるのではなく、自社は社会に対してどのような貢献ができるかをじっくり考え、損得抜きで、お客様や社会に奉仕しなくてはならないことを認識すべきである。そうすることによって、顧客からの信頼を得る事ができ、同時に、顧客の精神的な部分を充足できるものとなる。

従って、自社の経営理念を今一度見直し、スタッフに周知徹底させ、スタッフは、お客様にそれらの理念を伝えていかなければならない。消費者の表面上の利便性だけを考えた単なる利益の追求のマーケティングに陥ることなく、社会に貢献できる自社の使命を伝えて、お客様に信者になっていただかなければならない。これを私は、「ミッショナリー・マーケティング」と呼んでいる。

 

七、ミッショナリー・マーケティングを実行し消費者が本当に望んでいるサロンになるには

消費者は期待値以上の価値を認識することによって感動し顧客になりファンになって頂ける。そのためには、「損得」ではなく「善悪」で行動を考え、お客様にとって何が「善」なのか、それを考えてサービスする必要がある。

これまで、いろんな企業様にお会いさせていただいた経験から、ジャスト・アイデアではあるが、消費者に支持される具体的なイノベーション(革新的業態開発)のヒントを7つ挙げたい。

 

1.とことんカウンセリングサロン

あるサロンでは、新規客のカウンセリングに二時間かけて、結局、トリートメントだけしか行わなかった。しかし、お客様の満足度は絶大で、ハードリピーターになったという話がある。お客様の満足度を上げるためにはカウンセリングが最も重要であることは十分にしられていることであるが、カウンセリングに時間をかけ過ぎると効率が悪くなり利益を圧迫する。しかし、これに異常な程の時間をかけ、お客様の不満をゼロにし、精神的充足を目指す。こういったサロンである。

 

2.健康用品や介護用品の相談・販売サロン

体に良いとされる商材を取り揃え、お客様の健康状態の相談に乗りながら健康グッズや介護用品の販売を行う。実際には、お客様の健康状態を本気で心配され、遠赤外線などが出るサポーターなどを販売して、店舗販売比率が20%を超える店舗がある。また、韓国の漢方薬が含まれた石鹸などの販売を行いリピートにつなげようと努力しているサロンもある。ある男性客は加齢臭が消え、喜ばれている。

 

3.パーソナルスタイリストサロン

洋服のセンスについて、自分のセンスに絶対の自信を持っているのはわずか9.7%。10人中9人は実は自分の着こなしに自信がない。そこで、ヘアスタイルの相談だけでなく、洋服のコーディネートまでも行う。また、パーソナルカラー診断も使いこなし、お客様が知らない美を伝えてあげて、シーズンごとに、お客様個人に「似合う」をプレゼンテーションする。

 

4.地域エコリーダーサロン

環境問題については皆の関心事であるが、実際に自宅で具体的なエコ活動を行っている消費者は少ない。どのように環境問題に取り組んでいけば良いのかを伝え、サロンのスタッフがリーダーとなって地域の環境意識を啓蒙していく。朝、駅前を掃除するサロンが増えてきているが、それら以上の行動を徹底して行う。

また、カーボンオフセットに参加することも考えられる。自社がどれだけ炭酸ガスを排出しているのかを把握し、削減目標を決める。削減できた量を示し、目標に達しない部分はお金を提供してオフセットしていく。他業界では、環境問題を販促のチャンスと捉えることが増えた。トヨタやホンダのハイブリッドカー好業績を見ても分かる。身近な例では、オフィス用レンタル観葉植物に、カーボンオフセットしていることを示した札を植木につけて差別化しただけで、引き合いが急増している企業もある。

 

5.栄養士駐在サロン

健康志向を背景に、栄養士は病院以外でも、介護業界、スポーツ業界など様々な業態で活躍するようになっている。個人情報を多く保持している理美容業でも活躍できると考えられる。病院以外でも自分の健康状態に合わせた食生活のアドバイスを身近な店舗でしてもらえるメリットは大きいと考えられる。美容と健康ニーズを同時に満たすサロンである。

 

6.完全訪問型サロン

一人サロンの延長線上の業態である。完全予約制で、お客様のあらゆるニーズにこたえる。別メニューで、お料理やお掃除もしてくれる。忙しい、体が不自由などの理由で、美容室になかなか行くことができないが、比較的裕福なお客様をターゲットにする。集客はインターネットで行い、あらかじめ必要サービス時間を設定すれば、ネット予約だけでも顧客を集めやすくなる。別の業界では、データベースを構築することにより、店舗を持たずネット上のコミュニケーションで成功している不動産業も登場してきている。

 

7.自己啓発系サロン

興味のある分野に特化して情報を収集し、「オフ会」の様を呈しているサロンである。秋葉原に歴史好きが集まる飲食店(歴女バー)が話題となった。理容業でも鉄道ファンが集まる店舗があると聞く。要は志を同じくする「場」の提供である。

 

現在は、コスト削減や消費者ニーズにばかり焦点が当たっている。それらは常に変化し、サロン側も不断に対応することが求められる。しかし、「地球を愛する」や「健康でいたい」「志を同じくしたい」といった「気持ちの上位概念」はいつも存在し不変である。社会に貢献すると言った観点から、これら不変の課題に対して、自分たちは何ができるかを考え、業態を開発していくことが重要であると考えられる。

自己紹介

1995年
経済産業省認定 中小企業診断士 登録
2000年
ハタナカマネジメントオフィス 設立
ファッション業界、美容業界を中心に、現場ですぐに役立つ提案と支援を得意としています。
最近では、社会保険導入に関する賃金・給与制度の見直し、社労士とコラボによる就業規則の作成、チームワーク改善、強みの武器化のコンサルティングを行っております。

2013年
BSA(ビューティサービススーパーバイザーアカデミー)専務理事
国際理容美容専門学校 マーケティング講師
2014年
JBCA(日本ビューティコーディネーター協会)1級テキスト作成、アイコーディネーター検定2級テキスト作成

スタイリングマップ講習のご案内

日本ファッションスタイリスト協会が主催しているスタイリングマップは、美容室のマーケティングでは、シンプルで最強のツールになると考えられています。

それに気がついているサロンのオーナー様はまだ少数です。スタイリングマップは、色、形、素材で、それぞれが4つのタイプに別れます。基本的に、パーソナルカラーが軸となっています。これに、さらに造形心理学と素材感がまとめて統一して体系化してあります。

これまで、ありそうでなかった理論で、ファッション&美容の業界ではノーベル賞級の発見です。最近では、それに、行動、感情、対人タイプが重なることが分かり、似合わせのご提案はもちろんのこと、パーソナルな接客まで役に立つ理論です。曖昧なところが非常にロジカルに似合わせが可能になります。

現在、美容室に求められている事は、技術より接客の納得感です。それは、電話の受付から始まり、カウンセリングでその納得感が高まるかどうか、施術中の技術の裏付けの納得感、最後、仕上げの納得感です。この納得感を出せない技術者が多いのは、技術ではなく、納得させるコミュニケーション能力であることが分かってきています。その納得感を感じて頂くコミュニケーションで必要だったのが、スタイリングマップの理論であったわけです。

これをいち早くものにしたサロンが、その地域では、ライフスタイルリーダーになれます。また、マーケティングにおいて、そのスタイル1つをコンセプトにするだけでも、いろんな展開ができます。ここを分かって、それを実践している美容室の経営者は、実は、まだ誰一人もいません。早く勉強して取り入れたもの勝ちです。ファッションの業界では、既に、伊勢丹やユナイテッドアローズなどの大手が取り込み始めており、実は、美容の業界でも大手メーカーが動き始めています。本気で興味がおありになる方、ご連絡下さい。協会代表の相澤先生と一緒に、丁寧に、ご案内していきます。

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