美容室経営で大切なこと 24.マーケティングミックスを考える
3年計画(基本戦略)が決まったら、短期の戦術を考えます。この先1年間をどうするか。
その具体的な戦略をマーケティングミックスといいます。
その要素は4つあり、「サービス・商品(プロダクト)」「価格(プライス)」「場所(プレイス)」「販促(プロモーション)」に分かれます。英語の頭文字を取って、4Pといいます。また、同時に、サービス業では、サービスマーケティングというものを考えます。この要素は3つあり、「会社」「従業員」「顧客」の関係性で戦術を立てて行きます。、「サービス・商品(プロダクト)」については、これまで言ってきたように、「本質+α」を基本にして、前回にお話しした「メニュー・商品づくり」を進めます。
そして、それにどう価格をつけるか、というのが、「価格(プライス)」です。価格のつけ方はそのまま業績に反映するので、経営者はしっかり考えなくてはなりません。
価格のつけ方の基本理論はあります。以下に述べることは基本なので、しっかり覚えましょう。
価格は、商品やサービスの性格によって変わります。商品の性格は、「最寄品」「買回り品」「専門品」があります。
「最寄品」は、日常生活に直結するもので、スーパーやコンビニに売っているような商品で、美容室でいうと、1000円カットみたいなものです。「買回り品」は、生活に関わるものの、その商品を買う時に、いろんな店舗を見てから決めるもので、付加価値型の美容室がこれに当たります。「専門品」は、宝石や高級腕時計、自動車など、一生に何度も買うものではなく、しっかり吟味して買うものです。このゾーンの美容室はあまり見たことがありません。
この3つで価格帯が違います。あなたのお店は、「最寄品」ですか? 「買回り品」ですか?
「最寄品」の場合は、対象は価格訴求で大きく影響されます。安い方がいい。こういうゾーンのお客様をペネトレーション層といいます。一方、その上のゾーンのお客様をスキミング層といいます。スキミング層は、バーゲンで安いよ、といっても価値がなければ動きません。
一方、それぞれの層でも、お客様をたくさん呼べる価格と、利益をしっかり取っておく価格をきちっと用意しておかなければなりません。割合は半々ぐらいで、メニューを準備しておく。
安い、高いではなく、この商品やサービスにしては値打ちがあり、他の店と比べて「リーズナブル」と思えるメニューと、他にはない独自なメニューをしっかり利益が取れる価格をつけて売るというバランスです。本質+αにmと付いて、独自性の高いサービスがなければ、利益が出ないということになります。
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美容室経営で大切なこと 23.メニュー・商品づくり その2
前回の日記で、メニュー数は多ければ多い方がいいとご案内いたしました。
客単価を上げるためには、その方が良いのですが、あまりに多いと効率が悪くなり、資金繰りが苦しくなります。
どのような商売でも注意しなければならないことは、成長している分野に人材やお金や時間をかけるということです。もし、もう流行おくれや古い技術に一生懸命、お金や時間を使っても無駄に終わってしまいます。
アマゾンを創業したジェフ・ベゾスは、起業前に、たまたま仕事でオンライン検索をしていたとき、 インターネットの商業利用が、 年間 2300%という 驚異的な勢いで広がっているという数値を偶然発見し、 自分なりに調査を始め、最終的に10兆円企業を作り上げました。本田宗一郎もバイクや自動車の時代が来ると読み、松下幸之助は、田舎から出てきて路面電車を見て、電気の時代だと読み、行動しました。まつげエクステンション市場も、最初にやり始めた企業が大きく数字を伸ばしています。のぼり調子市場だと競合も激しくなるのですが、人より1.3倍の努力をする価値はあります。少しでも早く気がついて絶対やり続けるという根性で長く継続するとで結果が出てきます。今、一生懸命にたまごっちを売ってもなかなか売れないのは、こういった市場がdownしているからです。みんな、スマホでゲームしています。
商品やメニューにも人の寿命と同じように、「導入期」「成長期」「成熟期」「衰退期」というライフサイクルがあります。成長期には販促費などはかかりますが、他の商品の売上高の落ち込みをカバーしてくれます。課題としては、今、売ろうとしている商品やメニューがどの期にあるのかどうかを検討するためにも、勘ではなく、やはり数字で検証するということです。
具体的にはPOSレジなどで、売れ始めた商品やメニューを数字で判断し、以前に比べて勢いがなくなっている商品やサービスを見極めます。
昔は、この機械を使ってこういうパーマをしたけれど、今はあまりやらなくなったということなら、見切りをつけなくてはなりません。しかし、簡単にあきらめるということではなく、それをするのにこれだけ準備して、材料費はこれだけかかっている、しかし、お客様は数人、だったら効率がすごく悪いので止めよう、というように、数字で検討してから止めます。現場で良く見られるのは、たった1人のお客様のために、10数本の在庫を取ってしまう事です。そういった場合は、1人のお客様のためへのサービスであれば、他店で正規の価格で購入し、同じ価格で販売した方が大きな在庫を抱え込まなくて済みます。こうしてキープしたお金で、新しく成長していく商品をたくさん買います。
よく売れていると思っていても数字で見てみるとそれほど儲かっていなかたり、一方で、目立たないけれど、意外と毎月コンスタントに利益を稼いでいるものがあったりします。それをハッキリさせるにも数字が必要です。
ビューティーサロンレスキュー » 美容院コンサル日記美容室経営で大切なこと 22.メニュー・商品づくり
メニュー・商品づくりについては、基本ラインは「本質+α」です。
その本質の「シャンプー、カット、カラー、パーマ、トリートメント」のメニューについては、いろんなものがあると思うのですが、それぞれのポテンシャルを130%上げていかなければ、この厳しい競合状況の中、簡単には生き残れないようになってきております。
自分たちのサービス・商品の方向性はどこなのか。 今のデザインの追求なのか、癒しなのか。
一般的には、ヤング=デザイン ミドル以上=リラックス です。
当方の経験からすると、今のデザイン追求と癒しの追求は、なかなか両立させにくいような感じがありますが、両方をやり切るという方向性もあると思います。どこもやり切っていないのでやれば、ミドル以上で、デザインもリラックスも両立できるとすれば、バリューラインからいい意味で外れるので、独占状態ですね。
同じメニュー価格ならば、「メニュー数=客単価が高くなる」
客単価の元はメニューのバリエーション」です。1,000円カットは1メニューしかないので客単価は1,000円です。たくさん情報をインプットして頂くメニュー数が豊富にあってこそ、カウンセリングしたときの組み合わせバリエーションが増えてお客様のご要望に合わせやすくなり、客単価が上がります。ですので、自店のターゲットに合わせて、他店に比べてユニークなメニューを少しでも多く開発しておくことが重要になってきます。
そして、お客様に合う付加価値の高いメニューを見つけ出す、精度の高いカウンセリングを行います。ここでの成功率が店舗全体の客単価に大きく影響します。
また、カウンセリングで気がつかなかった提案などは、施術中のお声かけなどにより、複数の施術が可能になります。あとはその施術単価がいくらかによってそのお客様のその日の利用金額が決まります。
ここでも重要な事は、例えば、パーマ比率を上げて客単価を上げるという目標があれば、どの人にパーマをお勧めするかを全員で意識を共有しておくことです。当日の施術20名のうち、4名がパーマならパーマ比率は20%です。もしパーマ比率目標が30%ならば、あと2名ふやして6名を施術すると30%になります。その日の施術は厳しくとも、確実にこの2人にパーマをご提案するという行動をとってこそ、目標達成に近づいていきます。
このような流れを見れば、飲食業などと違い、途中でメニューの追加をしにくい業界であることが分かります。メニューの準備とカウンセリングをしっかり行い、また、その日には出来なかった施術など、次回のメニューアップにつながるアフターカウンセリングも非常に重要です。
ビューティーサロンレスキュー » 美容院コンサル日記美容室経営で大切なこと 21.人づくりの基本的な考え方について
美容室の経営では、人づくりが最も大切になります。人が成長するということは、技術力があがる、サービス力があがる、そして、人間性がアップし、ファンがつくということですが、結果的に売上が上がり、サロン全体でいうと、「生産性が上がる」ということです。
「生産性」は美容師さんにとって、おそらく最も関心の深い指標でしょう。生産性の指標は何種類かがありますが、どの指標も、インプット(input:かけたもの)と対比したアウトプット(output:成果)の割合を見ます。どういう事かというと、例えば、2名で売上を100万円作る場合、2名がインプットで、100万円がアウトプットです。30日で100万円の売上を作るならば、30日がインプットで、100万円がアウトプットです。
生産性 = アウトプット ÷ インプット
生産性は、効率性と似ていますが、効率性は「モノに無駄はないか」を見るに適していて、生産性は主に「ヒトは成長しているか」いう事を考える時に適しています。
美容室の業界で最もポピュラーな指標が「従業員一人当り売上高」です。美容室業界の従業員一人当りの売上高の全国平均は約50万円です。これは売上100万円/月の場合、スタイリスト1名、アシスタント1名というケースが多いということです。全国のスタイリストの主担当売上の平均が約100万円ですので理に適っています。
もしも、アシスタントがいなくなっても、一生懸命に動いて、さらに店販品などを売って、売上高が100万円維持できるならその方がいいですが、現実的には一人では、多くのお客様をお相手できないため70万円~80万円までになってしまうことがほとんどです。お給料が18万円のアシスタントがいなくなって30万円も売上を落としてしまえば、その差の利益が減少してしまい、他の固定費が払えなくなってしまいます。
あなたのお店の数字を入れましょう。(人は成長しているか!)
1人あたり売上高 = 月間売上高( )
従業員数( )
<社会保険加入の目安>
よく社会保険に加入するには従業員一人当り売上高が60万円~65万円は必要と言われています。なぜかと言うと、社会保険料はお給料の約28%を労使で折半して費用を賄いますので、お給料の約14%を別の人件費(法定福利費)として支払う必要があるからです。
もし、全員のお給料合計の比率が売上高に対して40%であった場合は、40%×1.14=45.6%となり、社会保険料は、売上高に対して5.6%のコストとなります。だから、単純に社会保険に加入するには、一人当り売上高を50.4万円×1.056で、53.2万円にしなくてはなりません。さらに、ここには材料費の増加分と給与の増加分は含まれていなので、実際には一人当り売上高を、せめて黒字サロン平均の57万円近くまでもってこないと、お金が足りなくなるので、60万円は最低、クリアしなければなりません。
ビューティーサロンレスキュー » 美容院コンサル日記美容室経営で大切なこと 20.3年後を見据えた基本戦略を作る
誰に、何を、どのように、、、、が、だいたい決まったら、次は、それを、3年後には完璧に出来ているように計画を立てます。これを、基本戦略と言います。
基本戦略の中身は2つあって、1つは、3年後に、いくら売り上げますかということと、1年目~2年目はどのくらい売り上げるか(定量目標)、2つ目は、その売上をやるために、具体的に何をするか(定性目標)を立てる、、、ということです。
これが基本戦略です。
もう少し、細かく具体的に言いますと、
1年目~3年目にかけて、売上の計画を立てます。
そして、それぞれの年で、
①店づくり ②客づくり ③メニュー・商品づくり ④人づくり を考えます。
①の店づくりは、投資のことです。売上を飛躍的に上げていく場合は、コンセプトに基づいて、何かの投資をしなければなりません。機械や材料に投資する、増床する、もう1店舗出す、などです。私のあるクライアントでは、基礎化粧品をしっかり売っていきたいということで、肌診断機を購入されました。フルフラットになる椅子など、高いものだと、直ぐには買えませんが、3年後には、それらが揃っているという計画は立てなければなりません。そして、その機械などが上手く使われるために、今から練習するなどの準備をして、、、結局は、「客単価」が上がる!ということです。
②の客づくりは、字の通り、「客数」です。コンセプトに基づいて、実際に何人のお客様に来て頂くかを決めます。
客単価×客数=売上高 になるので、客単価が決まれば、自然に客数が決まります。その客数を呼ぶために、新規客は何人? その為にどんな販促をする、と言う風に決めます。そして、最終的に、1年間の有効カルテ枚数が何枚貯まっているか!と決めることです。
③のメニュー・商品づくりは、コンセプトに基づいたメニューづくりの事ですが、さらに、「客数が稼げるメニュー」と「利益がしっかり取れるメニュー」を決めることです。この比率は、半分ずつがいいです。どっちかに偏ると儲かりにくくなります。客数ばかり稼げるのは安いので、やってもやっても利益が上がらない、しっかり利益が取れるものばかりだと敷居が高すぎて客数が集まらないということになります。
④の人づくりは、3年後の売上をやるためには、スタッフは何名になっている必要があるのか、どんな感じで育っていて、社員教育にどんなことをするのかのテーマをしっかり決めておくことが重要です。
この基本計画(3年計画)を、毎年、見直します。3年後にどこまで近づけたか。こういう方法を「ローリング・プラン」といいます。3年後を見据えて、1年間やって、また3年後を作り直す。作り直す必要がなく、そのまま達成しているのが一番良い事です。
ビューティーサロンレスキュー » 美容院コンサル日記美容室経営で大切なこと 19.3年後を見据えたドメインを設定する
次に、これまで整理した「SWOT分析」と、「本質+α」を考えて、きちっとしたドメインを設定します。
8月2日にご案内させて頂いたように、ドメインの設定とは、理念からくる「本質+α」を決めることと、その「ターゲット」を決めることです。「誰に・何を・どのように」をしっかり独自化させることです。3つの軸で捉えることで、もれなく表現することができ、方向性を明確にすることで、その方向性を具体化するための戦略が立てやすくなります。
基本的に、「市場は、創るもの」です。なかなか売上が上がらない時は、新市場を創るしかありません。その新市場を創るために「戦略」を立て、その戦略にあわせて「組織」を組み上げます。その時、最初にやらないといけないのは、はじめにご案内したように、「次の世代のことを」を考えるということです。今、旬の世代は、10年後は新しい世代に取って代わられます。だから早めに、10年後の市場を描くために、10年後のことを良く考えるということです。10年後の新しい付加価値って何だろう?と。そのために3年後は、どうなっていないといけないのか。
ここで、昨今の外国人観光客急増という外部環境の急変を例にとり、「本質+α」のドメイン設定の例をご案内します。ドメインは、「誰に・何を・どのように」を決めることなので、それに沿って決めます。
まずは、誰に(目指すターゲット)は、「子育てが終わり、夫と二人で日本に観光に来たイギリス人女性。結婚して25年。夫は公務員職員。見た目は、スポーティでかつモダンな感じで、イギリスではボランティアをしている。家の庭には、イングリッシュガーデンが広がる。日本大好きマダム。」という風に設定します。
次に、何を(売り)は、「友達よりより綺麗になるが売り。具体的には、日本人の感覚によるカット&カラー。カラーのカウンセリングが丁寧。バリエーション豊富(パーソナルカラリストを養成)。また、日本風なネイルデザインをご案内。室内は、色とりどりな花の装飾。その他、日本の旅、ショッピングのレア情報を楽しめるサービス。」などです。
最後に、どのように(他店と異なるテーマ)は、「イギリス人富裕層を徹底分析。イギリス人用のスタイルブックを作り提案。→施術後、写真を撮らせてもらう。その他、コスメ、健康を切り口に、自然食など、日本食のレシピなどを英語で作る。さらにお土産として、お客様の花言葉の「花」も売る。近所の花屋と提携。ネイルは日本の文化を感じられるようなサンプルを準備しておく。」などです。
番外編で、法律が変わり、宿泊業では、「民泊」が広がってきました。こういうのも機会に捉えると、「宿泊施設と提携」や、地方なら自らが「民泊」を+αとして提供し、外国人の移動の拠点となって、ヘアをして頂くという、ダイナミックなものも生まれてくると思います。
ある会社では、不動産屋さんも経営していて、アシスタントさんがお客様に家を売って、そのマージンをいただいて、60万円も給料を得た話などもあるので、全く無理な話ではありません。
但し、その「民泊」が自社の経営理念や店舗コンセプトにあったものでないと、ただ2件、経営しているだけになるので、経営資源が分散化し、効率が悪くなるので、ターゲットが喜ぶ、しっかりしたドメイン設定(コンセプト設定)を行って、3年後、独自化された店舗経営を目指しましょう。
ビューティーサロンレスキュー » 美容院コンサル日記美容室経営で大切なこと 18.ちゃんとしたSWOT分析をやる
これまで、市場調査(PEST分析、5F分析、3C分析・・・特に競合店調査)、会社の中の事(3C分析、覆面調査、顧客リストの内容理解)を終えたら、いよいよSWOT分析です。
上のような調査をやらないでSWOT分析をやっても現状を変えられないので、注意して頂ければと思います。
さて、SWOT分析とは、企業内の経営資源と、企業外の外部環境の2つの切り口で、それぞれにおける、良い状況と悪い状況を明らかにして、自社の差別的優位性を発揮できる生存領域(ドメイン)の見極めを行う分析です。SWOTとは、内部環境における「強み:Strength」と「弱み:Weakness」、外部環境における「機会:Opportunities」と「脅威:Threats」の頭文字をとったものです。
①外部環境と内部環境
まず、前日まで案内した各種のマーケティングリサーチを行い、外部環境を把握し、「機会」と「脅威」を分析します。その大きな目的は、サロン運営の「機会」を探索することです。競争上、自店舗の優位を享受できる魅力のあるところは何かということです。一言でいうと「追い風」のことです。身近な例では、近隣に高層マンションが出来た、鉄道が延長になり、最寄りに駅ができたなどとなります。
美容業界では、いま、育毛の技術が進化していることなどが「機会」といえます。
一方、新しい競合サロンが出店するなど、外部の環境変化によって「脅威」がもたらされることもあります。「逆風」のことですが、常に外部環境に注意を払っていないと、いつの間にか「逆風」に晒されて、の地位が侵食されます。となりにじっくり施術を行う1人サロンができたとか、近くに安売り面貸サロンができたとか、簡単に染められるカラー剤をドラッグストアで売り始めたとかです。
次に、内部環境分析を行い、競合店に対する「強み」と「弱み」を明確にします。ここでも大切なことは「強み」を明確化することです。多くのサロンでSWOT分析を行っていただきましたが、自店の「強み」を明確にできないサロンが多いです。「強み」がなければ戦うことができませんので、必ず「強み」になる要素を発見しなければなりません。例えば、社歴が長いということも、その伝統がしっかり継続されていれば、「歴史」が強みとなります。「弱み」としては、財務面でキャッシュフローが乏しく、新たな投資がしづらいなどが挙げられます。
SWOT分析を行う場合、よく「機会」と「強み」を混同してしまうことがあります。例えば、いいディーラーとお付き合いが出来ているというのは、「強み」になりますが、そこのナショナル商品が評判よく差別化の要因になっているというのは、メーカーの商品開発努力であり、取り扱うことができるという「機会」になります。自ら開発した商品であれば「強み」ですが、他の店舗も仕入れることが出来るのであれば「強み」とは言い切れず、その商品に頼り切るのは危険であるといえます。設備や内装も「強み」となる場合がありますが、本質的な強みとは、真似の出来ない技術力(日ごろの切磋琢磨)や高いレベルのお客様との、長年のお付き合いによって醸成されたサービスレベルなどです。潤沢な資金なども「強み」ですが、お金で短期間に解決できるものは、参入障壁が低く「強み」とは言い切れないと考えられます。
②分析方法
SWOTを項目別に抽出した後に、よく外部環境と内部環境を重ね合わせて分析する、クロス分析という手法が取られます。
1.機会×強み:最も効率のよい運営ができる状況であり、「コア強化戦略」となる。
2.機会×弱み:追い風を活かしきれていない状況であり、「改善戦略」となる。
3.脅威×強み:競争優位性に立っているが予断を許さない状況であり、「差別化強化戦略」となる。
4.脅威×弱み:シェア低下かつ独自性を活かしきれない状況であり、「選択集中・撤退戦略」となる。
以上のような戦略が挙げられますが、要は、「強み」への力の集中です。
よくあるのが、
強みで、従業員の中がいい、とか、お客さんのことを良く知っているとか、ケラスターゼを扱っているとか、ジョンマスターを扱っているとか、少し頑張ればできることとか、メーカーの商品の強さに頼っているような言葉が出てきます。
これらは、確かに強みかも知れませんが、これが出来るのは自分たちの店だけではないので、「武器」には全くならないんです。
商品を使いこなす、独自な方法を考えて、あ、これはなかなかなできないね、、、と相手に言わせるくらいになっていないといけないことです。
もし、そうなっていれば、売上が上がっているはず、ですし、上がってなければ学芸会的な自己満足か、そもそもお客様が知らないかです。(プロモーションの部分)
ここで、重要なのは、今、強みになってなくても「強みにしたい」と思う事と、強みになるまでやり続けることです。(長期にやり続けることが信用につながります。でも惰性ではだめです)
その期間と掛けたお金が参入障壁になって、そう簡単にまわりは、まねできません。
ですので、強みを書きだすときは、2~3個、将来強みにしたいということも合わせて書く事が重要です。
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美容室経営で大切なこと 17.顧客名簿から、どのような人がいま来店いただいているのかを知る
PEST分析や5F分析、3C分析(競合店調査や自分のお店への覆面調査など)などを行ったら、今度は、3Cの中のCompanyの部分で、もっとよく分析するために、顧客リストを整理して下さい。内部の分析(内部環境分析といいます。)では、この顧客リストの分析が非常に大切になってきます。
10回目に説明したターゲット設定のときに、1つ目は「欲求レベル」、2つ目は「らしさ」、3つ目は「ファッションスタイル(見た目)」で決めて行くのが良いと説明しました。
このモノサシで、今のお客様は、どんなお客様が一番多いのか、を分析して下さい。
今のお客様は、どこに住んでいる人が多く、何歳くらいの人が多くて、どんなお仕事をされていて、見た目はどんなファッションスタイルの人が多くて、どのぐらいの所得で、どんな家族がいて、、、などを一つひとつ、ランキングして頂ければと思います。
△△町に住んでいる人 何人 □□町に住んでいる人 何人、、、、、
10歳代 何人 20歳代 何人、、、、、、、
看護師さん 何人 学校の先生 何人 お医者さん 何人、、、、などと、
趣味は、ショッピング 何人 旅行 何人 お花 何人 アウトドア 何院 などなど。
ランキングして、今のお客様の大多数の人たちをつかんでください。
その人たちが、「今のお店、今の皆さんの付加価値を支持」している人たちです。
ここがきちっと分かっていなければ、今後、誰にアプローチしていいのかを決める時に、凄く曖昧になってしまいます。
美容師さんは、お客様のことをすごく良く知っているのですが、数字でデータにしていないので、いつも曖昧で、こんなにお客様と近い関係なのに、ほとんど何も活かせていない状態になっています。もったいないことなのです。
せめて、住所と職業は集計して、次におこなう、SWOT分析に活かして頂きたいと思っています。
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美容室経営で大切なこと 16.市場の規模を考える
このサイトで5年ほど前に「美容業界レポート」というのを出しました。その中で、実際には、どれくらいの美容室が生き残っているか、という試算をしましたが、ここで修正をしたいと思います。
矢野経済研究所の調査によりますと、2014年度の美容室業界の市場規模は、1兆5,285億円で、サービス業の中では、非常に大きな市場規模を誇る業界です。しかし、前年度比98.7%となりました。消費者の節約志向はまだまだ続いており、来店サイクルが伸びたり、割引クーポンを導入するサロンが増えたりして、市場規模は微減となりました。
また、厚生労働省の衛生行政報告例によりますと、全国の美容室の数は、2014年は234,525施設です。2010年は223,277施設でしたので、4年間で10,812店舗増加したことになります。比率で見ると104.8%となります。一方、この4年間の人口の推移を見てみますと、2010年は128,057,352人で、2014年は126,948,756人となり、4年で1,108,596人減少しています。比率で見ると99.1%となります。人口が約1%減っているのに、美容室は約5%も増えています。実数でいうと100万人も人口が減ったのに、1万店舗も美容室が増えたということになります。2013年度から2014年度は、3,436施設も増えており、この勢いはまだまだ続くと考えられます。ちなみに、厚生労働省の衛生行政報告例の生活衛生関連施設は全部で14項目あるのですが、施設が増えているのは、美容所とホテルと簡易宿所営業とクリーニングの無店舗取次店の3つだけです。ここ最近の外国人観光客の増加でホテルは増える理由は分かりますが、市場規模が縮小しているのに、施設数が増えている美容室業界は異次元といえるでしょう。
ここで、1施設あたりの市場規模はいくらだろうかと、割り算をしたくなります。市場規模は1兆5,285億円で、234,525施設ですので、1兆5,285億円÷234,525施設=651.7万円となります。1年間の美容室の売上の平均が651.7万円は、どう考えてもおかしいですね。約23万店舗あるとされていますが、実際にまともに稼働している美容室ははるかに少ないということになります。
では、約23万軒のうち、どれくらいがまともに稼働している状況でしょうか?ここで試算をしてみます。
まず、平成26年の経済センサスによると、全国の美容業の事業所数は、175,488件です。234,525店鋪のうち、約74.8%が1企業、すなわち約3/4が1店舗企業であることが分かります。従業員数は482,191人です
一般的にスタイリスト、アシスタント、事務員の方など全従業員の給与(額面)の合計金額は売上高合計の約40%程度のお店が多いです。ですので、全国の従業員給与は、約1兆5,385億円の約40%となるので、6,154億円となります。従業員数が462,737人ですので、一人当たりのお給料は年間約133万円!ということになってしまいます。かなり少ない金額です。
一方、賃金センサスや民間の調査資料によりますと、美容師1名あたりの1ヶ月の給与(総支給額)の平均は、約23万円、年収にして約280万円です。業界全体で一人あたり年間133万円しか支払う能力がない状況で、実際には280万円の支払いが起きているので、23万店舗という数字は、実際に営業している店舗より、約2.1倍多いことになります。(280万円÷133万円=約2.1) 約23万軒ある美容室のうち、きちっとお給料を支払えるだけのきちっとした営業をしている店舗は、約11.2万店鋪と推定されます。
(234,525店舗÷2.1=111,679店舗)
厚生労働省発表の約半分しか、実際には生き残っていないことが推測されました。
ですので、この4年間で約1万店舗も増えると売上が厳しくなるのが分かります。売上の厳しさは、景気の影響よりもこちらの影響の方がはるかに大きい事が分かります。
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美容室経営で大切なこと 15.たまには覆面調査を入れましょう。
人間、自分は出来ていると思っていても、なかなかそう出来ているものではありません。私自身も偉そうに記事を書いていますが、できていないことばかりです。
そこで、どうしたらいいかというと、第3者に見てもらうのが一番です。
一昨年、3ヶ月ほどビジネスコーチについていただきましたが、凄く楽で、また、上手に誘導してくれるので、非常に役に立ちました。
これと同じように、店舗の運営は、お客様目線でよく見てもらうことが重になってきます。
私の立場で店に行くと、「素」がみれないので、優秀な方にいつも、覆面調査をして頂きます。
そこでは、前日にご案内した、チェックリストに基づいてと、本当に美容が大好きで、なおかつ、接客のプロにお願いしています。
なぜ、入って頂くか。それは、リアリティあるSWOT分析をするためです。自分たちのことは分からないので、お客様に対しての「弱み」がリアルにはっきりさせなければなりません。
よくあるのが、競合店調査に行ったあと、これはうちではやらない!と思っていることが、覆面調査に方に、同じことを指摘されます。できているようで、全く出来ていないんですね。
ちょっとだけ例をのせますと、
「新規なので場所の案内の確認と施術のトータル時間のお知らせが必要かと思います。また最後に『何か他にご不明点はございませんか?』があるとさらに期待値があがる
と思います。」と指摘されたり、「担当者の人が来るまで15分待ったこと。カットの雑誌が一回り下の世代の雑誌だったのであまり参考になりませんでした。」など。
また、「ファンを増やすには今一歩踏み込んだコミュニケーションが必要かもしれません。例えばカラーを来月かけようかなと思っていると話していたので『こういうカラーがお似合いかもしれませんねー。よろしければぜひお任せください』とか次回のアピールするとかです。」お客様がそういうしぐさを見せたら、チャンスでしょう。また、言葉遣いで気になったのは 『すみません』を何度もおっしゃる癖があるようです。『失礼いたしました』や『申し訳ございません』に変えていただけるとよいかと思います。」とか、的確にプロとしての指導が着いてきます。一般の調査員ではなく、プロから指摘を受けるので、いちいち迷わない。直ぐに腹に落ちます。
その他、終わりの時間の確認がなかったとか。ミーティングでは、いつもちゃんとしているという報告が上司にされるので、上司も指摘でいない。
こういう現場での弱点をわからないと、ミーティングの時間がもったいないです。
あるサロンは、結果を見て、俺たちは出来ている!といって反発したりします。でも、できていないんだから、反発しようが、がっかりしようがしょうがない。そんな甘い事を言ってられないんです。しかし、そういう方々も、やはり真摯に取り組まれるので、最終的には結果が出てきます。
SCに出店している某サロンは、その後、ナンバー2の評価を頂いたようです。(デベロッパー側もその後、復面調査を入れたようです)
彼らが、反省した文章を転記します。一見、当たり前の内容です。でも、やっと魂が入ったのかと思います。
自分たちのしていることは、なかなか分からない。以下、内容です。
◆調査結果を踏まえ、反省、やり直しの内容
ターゲットである、公務員の奥様、看護師、自営業者などいいお客様が来るので、
① ネームコールの徹底
② 全員接客・笑顔
③ 店内の細かな整理・整頓、かたずけながら仕事する。
④ スタッフ間コミュニケーション時の笑顔
⑤ 全員でもう一度シャンプーし合う
⑥ マッサージをみんなで統一
⑦ 忙しくとも丁寧さ
⑧ 担当ではないお客様への気遣い
⑨ 次の人が使いやすいようにシャンプー台の後始末
⑩ メインターゲットのライフスタイル勉強
⑪ メインターゲット向けブログ内容
このような感じで、反省されていました。
一見、当り前ですが、腹から意識することが大切で、それが進化につながって来るようです。
今、オリンピックやっていますが、悔しさも進化の糧ですね。